エメラルドグリーン
瞳が緑色。髪は金。肌は白め、汚れなんてないみたいな。美少年という表現が正しいかもしれない。何歳だかは知らないけどたぶん私より五個前後は上だろう。同い年かそれ以下には見えない。同窓会で会ったら恋をしてしまうかもしれない男子。でも何かを抱えている。その暗さに惹かれる。……のかもしれない。
雰囲気が変わる瞬間。これが男であると気づかされる瞬間が見たくて会ってしまうというのもある。
「君って時々、すごく俺のこと好きみたいな顔する」
何を思っているのか見えない顔で言う。それ、今言うの? 目を合わせて無言の圧力をかける。行為の真っただ中で言うことではない。いや、こういう時だからこそ男は言いたくなるのだろうけれど。見つめていたら体が密着して、息を飲み込まれる。痛みもない。この体はもうセックスに慣れてしまった。
「ずるいよ」
「……なに?」
「そんな目、みんなに見せてるんだと思うと、自信なくなるな」
「ナルシスト」
「そうかも」
「やめてよ」
「……ごめん」
そんなのはこっちのセリフだ。あなたは時々すごく私のことを好きみたいな顔をする。そんな目をみんなの前でしているのかと思うと、切ない。本当にどうしようもない。男が男になる時、女は女になる。
男と女の情事は気持ち悪いものである。積極的にしたいものではない。でも私はどうあがいても女であることを捨てきれない。女として男に求められるのが、嬉しいと思っている自分がいる。気持ち悪さを克服できればいいのだろう。本能なのだから。それにはたぶんこの行為自体を楽しいものだと認識する必要がある。今のままではそんなこと到底できやしない。
男が都合のいいことを言うのは自分が気持ちいい時だけだという先入観があるから、彼の言葉を信用できないのだろうか?
服を着ながら、男を見つめる。蜘蛛の刺青をこんなに簡単にさらしてもいいのだろうかと思う。そこ以外には心を許さないというプライド。これもけじめというやつなのかもしれない。
「回数増えたの気のせい?」
「回数?」
「会う回数」
「……そうかしら」
「旦那とうまくいってないんじゃないの」
「そうなのかなあ……」
「いつもならそんなことはないって否定するのに」
「うまくいってないわけじゃない」
「俺が本気で奪おうとしたら、君はすぐに落ちると思うよ」
「どこからそんな自信がわいてくるのよ」
「ナルシストだから」
「そうやって根に持つのよくない癖だわ」
「でも、君はそのくらい危うく見える。ちゃんとしとかなきゃ、俺みたいに優しい男ばっかりじゃないよ?」
「まずあなたは自分が優しいって認識を改めるべきね」
「そうやって話題をそらすの悪い癖だよ」
危ういってなんだ。危うくなんてない。こいつらのいるところには落ちない。でもそうなる可能性があることは否定しきれない。それが危うさなのだろうか。こうやって他人の意見にすぐ惑わされて思考してしまうのも危うさの一因な気がする。踊らされている感覚。それを忠告してくれた人間だと思うこともできる。
緑色に意識が左右される。